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こんにちは!ジョーです!! 航空学生時代の思い出第8弾!
今回から第202教育航空隊でのお話となります!入隊以降初めて小月教育基地を離れて勤務となります。新天地での生活と訓練についてご紹介します!
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新天地!徳島航空基地!
冒頭でもお伝えしましたが、入隊以降勤務していた小月基地から離れて勤務することとなります。そこで、これから訓練を行う徳島航空基地と第202教育航空隊について紹介します。
徳島航空基地ってどんなところ?
海上自衛隊徳島航空基地は、うず潮で有名な徳島県の鳴門海峡の近くに所在する官民共用の飛行場に所在する基地です。民間の方は「徳島阿波おどり空港」といい、12便/日運航する四国でも交通の要衝となる空港の1つです。滑走路延伸時はB747も運航されるなど大型機にも対応しております。
また、徳島飛行場の管制は日本で唯一海上自衛隊が官民全ての離発着機に管制業務を行う飛行場でもあります。(海上自衛隊で官民共用の飛行場は徳島・那覇・岩国となります。)
※ちなみに現在は滑走路の長さが2500mですが、滑走路が2000mの時代は上の写真の免許センターのところが徳島空港旧ターミナルビルでした。
第202教育航空隊とは
第202教育航空隊は第201教育航空隊を無事に修業した学生をさらにレベルアップさせるための部隊で「計器飛行課程」という名称で教育を行っています。
これはパイロットとして計器飛行ができることを目指す過程です。(第201教育航空隊は有視界状態で一定のレベル飛行できることが目的)これを習得するとIFR(計器飛行方式)での飛行ができるようになる「計器飛行証明」という資格を手に入れるレベルまで知識・技量を向上させます。また、事業用操縦士という国土交通省が発行するライセンスの取得もこの第202教育航空隊にて行います。
そして、TC-90という飛行機を運用するのですが、航空学生はここで初めて多発機(エンジンが2つ以上の航空機を総じてこう呼びます。)の操縦を経験します。
TC-90ってどんな飛行機?
TC-90は海上自衛隊で運用する練習機です。この飛行機はビジネス機でベストセラーとなっている「ビーチクラフト キングエアC90」というモデルの飛行機の電子機器を一部自衛隊のものを使用したものです。
海上自衛隊では徳島航空基地にのみ配備されており、実は隠れたレア機になります。また、自衛隊機としては珍しく全機アメリカから輸入し改修後引き渡しを行っております。
また、ぱっと見は全て同じように見えますが、導入時の年代により製造元のビートクラフト社の製造モデルが異なるため、TC-90も自然と新しいモデルになります。一番大きな違いはコックピットで、「アナログ機器→EFIS(電子飛行計器)→グラスコックピット」と新しくなっていきました。
上記の写真はEFIS搭載機で、計器の一部がアナログからディスプレイに変わっています。
機体のことをもう少し知りたい方はこちらもご覧ください!
初めての双発機 意外な初体験の連続
徳島航空基地で訓練が行われるにあたって、公私ともに初体験をいくつも経験しました!その時のお話を紹介します。
ヘルメットからの卒業
上のコックピット写真を改めてご覧いただくと分かるのですが、パイロットをよく見ていただくとヘッドセットとサングラスを着用しています。
そのため、T-5の時とは違い操縦時にヘルメットを着用しなくなりました。その代わり、飛行中に日差し対策をするためサングラスを購入します。
また、私はT-5で訓練していた当時からフライトの際はメガネをかけていたのでサングラスも当然度入りのレンズで作るため手元に届くまで少々時間がかかりました。
初めて買ったサングラスはベタですがRayBanのサングラスを購入しました!でも最近の部隊での定番はオークリーらしいです!!
多発機特有の操縦
TC-90は冒頭でお話している通りエンジンが2つ搭載されている飛行機ですが、操縦の際T-5と大きく異なる部分がありました。それは「ラダー操作」です。
T-5でも操縦する際、ヨーイング(機種方向の向きを変えるベクトル)を足元のラダーペダルで垂直尾翼にあるラダーを操作しコントロールするのですが、この操作が敏感かつ操作量が大きい!
その要因として、T-5に比べて推力が大きいこと・エンジン同士が離れていることでプロペラ機特有の推力不均衡などの効果がより際立ったのでラダー操作がより敏感になりました。ちなみに、TC-90はタキシング中のステアリング操作もラダーで行うので離陸前から影響を受けてます。
Vmc(最小操縦速度)と臨界発動機
航空力学のお話になりますが、双発機以上の多発機では「臨界発動機」という用語があります。これは「多発機のエンジンに故障を生じた場合に、飛行性に最も不利な影響を与えるような1基またはそれ以上のエンジンのこと。」を指します。
ゲームのフライトシミュレーターなどで体験していただくと分かりやすいのですが、片方のエンジンを飛行中に止めると特にヨーイングとローリングで影響を受け、まっすぐ飛ぶためにバンクをとりながらラダーをより踏み込みます。この影響はプロペラ機ではプロペラ効果と呼ばれる様々な影響で、左右のエンジンでその操作量が変化します。
エンジンが止まった時に、その影響がより大きいエンジンを「臨界発動機」と呼びます。
Vmcは「臨界発動機不作動時の最小操縦速度」のことを指すのですが、この状態での訓練を「Vmc Air」と呼びます。これは臨界発動機となるエンジンのスロットルを絞り疑似的にエンジンが止まった時の状態を作りつつその状態で安全に飛行する訓練です。
はっきり言って体力勝負でした(汗)
TC-90の臨界発動機は左側となるNo1エンジンで、このエンジンのスロットルを絞ると急激に左を向こうとします。これを抑えるため右足を強く踏み込むのですが、大きく左に向こうとするのと速度が遅くなり舵の効きが悪くなることの二重苦でこの科目が終わるといつも太ももがパンパンになってました。
基地全体の手厚いバックアップ
徳島航空基地では第202教育航空隊のほかに以下の部隊が所在しています。
- 徳島教育航空群司令部(徳島航空基地全体のマネジメント担当)
- 第202整備補給隊(フライトシミュレーターなどの機材整備から航空機の部品などの物品管理など担当)
- 徳島航空基地隊(基地の管理全般担当 航空管制・地上救難・気象予報など)
これらの部隊はそれぞれに業務があるのですが、その中心となるのが202教育航空隊でその学生が立派なパイロットになっていくためスムーズに訓練ができるように業務を行っています。
一言でお伝えすると「学生がストレスなく立派に育つ環境を作る!」という雰囲気が当時非常に強かったです。
そのため、学生の時は基地内のいろんな部隊の方と話すことがあるのですが、その度に「学生さんでしょ?訓練大変だから頑張ってね!」とよく応援されてました。例えば食堂ではカレーをたくさんついでくれたりするなどとにかく手厚く対応していただきました!
私は勉強も兼ねて「気象班」というところによく通っていたのですが、階級問わずいろんな方から気象に関する知識を教わり、その影響もあるのか休日には一緒に遊びに行ったりもするほど仲良くなった隊員もいるくらいです。
気象班の方々の仕事に興味を持った人はこちらも併せてご覧ください。
小月基地では徳島以上に学生も多いのもあるのでしょうが、あんまりそういう場面には遭遇しなかったので徳島航空基地の方々の対応にいい意味で面喰いました!
おわりに
今回は202教育航空隊編第一弾として徳島航空基地の簡単な紹介とTC-90での初体験について簡単にお話しました。次回は訓練が本格化しより難しい訓練にチャレンジする様子を紹介します。
TC-90での訓練はT-5ほど派手な操縦訓練はありませんが、計器飛行を習得するために別の部分で様々な経験を積んでいきます!エアラインパイロットにも共通するただ飛行機を操縦するだけじゃないという側面について紐解いていきます!
それでは次回もお楽しみに!!
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