【飛行機紹介】洋上救難最後の砦 US-2

飛行機紹介

こんにちは!
ジョーです!!

 最近、テレビで特集され再注目されているUS-2、世界的にも珍しい「飛行艇」と呼ばれる種類の航空機です。
 飛行艇とは、胴体の下半分が船のようになっており、水上に着水することができる航空機を指します。

 映画『紅の豚』で大活躍のあの赤いやつも飛行艇に区別され、日本では海上自衛隊が昔から紹介や救難任務で飛行艇を運用しており、救難用は現在も最前線で活躍しています。
 今回はそんなUS-2の秘密に迫ります!

US-2の概要

 US-2は海上自衛隊が運用する捜索救難を行う飛行艇で、前身となるUS-1A救難飛行艇の改良型として開発されました。

主な改良点は、
操縦系統のフライ・バイ・ワイヤ化
与圧系統の装備
グラスコックピットの導入
エンジンのパワーアップ

です。
 これまでの強みである短距離離着陸(STOL)性能や高波でも着水できる能力は残しつつ、飛行性能を向上させました。  

US-1AとUS-2の編隊飛行 奥からUS-1A、US-2試作1号機、同試作2号機、同量産型 海上自衛隊HPより出典

 US-2は、日本の新明和工業株式会社で生産されている国産機で、現在7機が山口県の岩国基地に所属する第71航空隊に配備されています。

 US-2が最もすごいスペックは、波高3mの荒波でも着水ができる能力です!他の飛行艇では波高1~2m程度が限度となりその差は歴然です。

 また、救難機のため平時は主に災害派遣で活躍しますが、有事のコンバットレスキューも想定し、機体は洋上迷彩となる濃紺とグレーのツートンカラーに塗られています。

スペック

滑走路へ向かいタキシング中のUS-2救難飛行艇。

US-2の基本スペックは次の通りです。

全長33.3m
全幅33.2m
全高9.8m
エンジンロールスロイスAE2100J(4,591馬力)×4
航続距離4,700km以上
最高速度580km/h(315kt)以上
乗員11名
新明和工業HPより出典

離着水性能

US-2最大の魅力となる離着水性能は以下の通りで、
競合の2機種と比べると離着水距離や着水可能波高が段違いです。

US-2CL-415(カナダ製)Be-200(ロシア製)
離水距離280m808m1,000m
着水距離330m665m1,300m
着水可能波高3m1.8m1.2m
スペックは新明和工業HPより出典

世界で最も荒波に強い秘密

 上記でご覧いただいた通りUS-2は他国の飛行艇に比べ、荒波に着水できる能力が非常に高くなっています。
それができる秘密が機体に隠されているのでご紹介します。
秘密の正体が「波消し板」「溝形波消し装置」「スプレーストリップ」です!

波消し板

展示されるUS-2救難飛行艇、写真上部の水平に薄く伸びた板が「波消し板」

 波消し板は、その名の通り着水した際に打ち上げられる波をせき止める役割があります。これが無いと機体全体に波が上がってしまい、エンジンが停止してしまったり塩害を加速させてしまいます。

溝形波消し装置

 これは機体の下半分、船体のようになっている部分をフェンスのように設置されています。これは着水時の波を隙間に入れ機体の横や下側へ逃がすことで波の衝撃を和らげるものです。

スプレーストリップ

 これも機体の下面に設置しており、削る前のカツオ節のような形をしています。これは、着水時の波を外側へ逃がし、機体に沿って上がってくることを防ぐことができます。その形状から通称「カツオ節」と呼ばれています。

US-2救難飛行艇の拡大写真
US-2の前部、機体色の境目に見える隙間が見える部分が「波消し装置」、赤い線の左側にある出っ張りがスプレーストリップ。

もし波をかぶってしまったら?

 3mもの荒波を着水するとどうしても機体全体が波をかぶることがあり、その影響でエンジンが止まってしまうことがあります。
 そして、エンジンには海水が入り込んでおり再始動させると入り込んだ塩分が固まってしまい、エンジンに悪影響を及ぼす可能性があります。
 そこでUS-2には「エンジン洗浄装置」が内蔵されており、再始動の前にエンジンを洗ってから再始動します。ちなみにイソプロピルアルコールを混ぜた水で洗います。

 このイソプロピルアルコールを混ぜることで水洗した後に飛んでも洗浄水が凍結しないためです。

なぜ日本にはUS-2が必要なのか?

 US-2が重宝される理由は、遥か遠い洋上へ救助を行うことに最も向いているからです。

 日本はご存じの通り島国で、非常に広大なEEZを有しています。特に太平洋側は広大で、近くに船が立ち寄れる島は少なく多くありません。

US-1AとUS-2の行動半径と救難実績 新明和工業HPより出典

 船内で急患が発生したり海難事故が発生しても船では現場へ到着するまで時間がかかります(護衛艦みがみ級で最大速力が約30㏏)し、ヘリコプターでは航続距離が短く(航空自衛隊が保有するUH-60J救難ヘリで最大約1300km)、現場までたどり着かないまたはたどり着いても現場に留まるだけの燃料が足りないという問題が起きることがあります。
 US-2ならば護衛艦と比較し速度が約10倍航続距離が救難ヘリと比較し約3.6倍と長距離の救助に向いています!

救難活動を行うUS-2。 海上自衛隊HPより出典

おわりに

 今回は救難飛行艇のUS-2について紹介しました。日本屈指の技術が詰まったこの飛行艇は日本のレスキューに必要不可欠となる存在となりました。
 
 ただし、世界的にも特殊な部類となる航空機となるので、パイロットの養成も非常に狭き門です。配備されている第71航空隊のパイロットは海上自衛隊でも屈指の腕利きが集まる部隊です。
 
 私の航空学生の同期も操縦センスが最もある者が配属されました。
 
 それほどの操縦技術をを求めるUS-2での救難任務は非常にタフで、場合によっては2次災害回避のため救助を取りやめる判断も強いられます。
 そのような悲しい判断を少しでも減らすべく、生まれたのがUS-2最大の存在意義なのです。

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