【航空機紹介】ルーキーを育てる T-5

飛行機紹介

 こんにちは!ジョーです!!

 今回から新シリーズとして「航空機紹介」を始めさせていただきます!

 海上自衛隊に限らず様々な軍用機について分かりやすくお伝えしつつ、豆知識なども散りばめますので是非最後まで読んでください!
 さて、今回はその第一弾として海上自衛隊のアクロバットチーム「ホワイトアローズ」が使用することで有名となった練習機「T-5」について紹介します。

 学生訓練だけでなく、アクロバット飛行でも活躍するT-5について紐解いていきましょう!!

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T-5の概要

 T-5は海上自衛隊が保有する練習機で、富士重工業株式会社(現株式会社SUBARU)が製造しました。KM-2練習機の後継機として1987年に海上自衛隊に採用され、1989年から小月航空基地にある第201教育航空隊で約33年の間海上自衛隊のパイロット育成に活躍しております。

 外見の特徴はサイド・バイ・サイド(並列複座)のコックピット(航空自衛隊のT-7はタンデム型複座)、大型のキャノピー、上空での視認性向上のため白色を基調とした鮮やかな塗装です。

列線に並ぶT-5練習機

スペック

乗 員1~4名
全 長8.4m
全 幅10.0m
全 高2.96m
最大速度193㏏(約357km/h)
最大離陸重量1,805kg
搭載エンジンロールスロイス M250-B17D
350馬力×1基
(カタログスペックは420馬力出るが
リミッターをかけている)

 乗員が1~4名となっていますが、アクロバットを行うときは機体の制限から2名までしか乗れません。

T-5の兄弟

 T-5には兄弟機となる飛行機がいます。それが、航空自衛隊でT-5と同じく練習機として活躍する「T-7」です。

T-5の兄弟機T-7 航空自衛隊HPより出典

 航空自衛隊でもそれまで使用していたT-3という練習機がいましたが、老朽化のため2000年度にT-7へ更新されました。

 T-5の兄弟機で、コックピットがタンデム(縦列複座)型となっているところ以外はT-5とパーツが同じで、垂直尾翼周辺や主翼などはT-5と同じ形をしています。

 そのため主要スペックもほぼ同じですが、T-5と若干要求している性能が異なりました。なのでエンジンはT-5と同型ですが、約50馬力大きいタイプを搭載しています。

T-5の歴史

 T-5はそれまで教育訓練に利用されていた「KM-2」という航空機の老朽化と、海上自衛隊で使用するそのほかの航空機がターボプロップ化し、KM-2とは特にエンジンの特性が大きく異なるため、機種更新の必要性が出たことから開発が開始されました。

小月航空基地に展示されるKM-2練習機

 このKM-2からの主な改良点は次の通りです。

・エンジンのターボプロップ化
・視認性の向上
・装備の更新(無線や計器など)

 KM-2を製造していた富士重工は、自社で保有するKM-2を改良する形で自主開発を開始し、「KM-2D」という航空機を制作しました。

T-5のプロトタイプKM-2D  FlyTeamチャーリーマイク様より提供

 これはKM-2にターボプロップエンジンを載せた試作機で、コックピット周りはKM-2ですが、エンジン・主翼・後部胴体などはT-5のような見た目になっています。このKM-2Dは1984年6月に初飛行し、ターボプロップ化したことによる飛行性能の変化をデータ収集しT-5開発の礎としました。

 そして、防衛庁(現防衛省)はKM-2Dの試験結果を見てその改良版の採用を決定しました。その後はモックアップ検査を行いコックピットのキャノピー化などの改良を経て、現在のT-5の姿となりました。

 コックピットの窓をキャノピー化したことで、KM-2に比べコックピットからの視界が非常に広がったことと、乗降ドアが廃止されたことによる部品点数の減少で整備性や軽量化の一助となっています。

進化するT-5

 T-5は先程お話した通り1989年から現在に至るまで海上自衛隊のパイロット育成に活躍しています。しかし、導入時から30年以上経過しており老朽化している機体も少なくありません。

 1997年度までに36機が生産されその後は生産終了していたのですが、老朽化を理由に株式会社SUBARUは防衛省からの要求より再生産することとなります。

 この時既に配備から10年以上経過していたため、無線機器や計器を中心に装備を新しいものに更新しつつ再生産しました。

 見た目にはほとんど変わらないのですが、実は外見から識別できるポイントがありますのでご紹介します。

T-5の前期型と後期型の比較画像

 上の比較画像と見ていただくと前期型と後期型には、見た目から違う点があります。

1:垂直尾翼後端の根本に当たる部分の切り欠け(赤い部分)
2:国籍標識付近の排気口の有無(黄色い部分)

 これは、再生産の際に計器や無線などの装備更新をしたことによる重量増加に対する軽量化やエアコンの増設に伴う処置と言われています。そのほかにも細かな装備の追加がありました。

 私が訓練していた頃は、前期型が多く配備されていたので後期型はたまにしか乗りませんでしたが、前期型の方が軽く感じたせいか操縦の反応が良かったと記憶しています。

 コックピットは世の中のグラスコックピット化に合わせて、一部の計器をデジタル表示にするなど改良がされています。

編隊飛行を行うT-5 コックピットの一部計器がディスプレイになっている。

広がる活躍の場 ~ホワイトアローズの誕生~

 T-5を一躍有名にしたのはホワイトアローズですが、実はホワイトアローズを名乗る以前からT-5でのアクロバット飛行は行っておりました。

 その時は「ルーキーフライト」や「ブランエール(フランス語で「白い翼」)」などと愛称が変わりながら活動しておりました。

 もともとは1990年代後半に教官の技量向上を目的とした「技術研究班」が発足されたことが始まりです。そのため、現在でもホワイトアローズのメンバーは第201教育航空隊の操縦教官で構成されています。

小月教育航空群HPより出典 ホワイトアローズの集合写真

 訓練は学生教育の合間に計画され、教官同士で技術を伝承させつつ切磋琢磨しています。

 技術研究班が発足してしばらくは航空学生の入隊式や「スウェルフェスタ(小月基地航空祭)」で披露しておりました。最近では海上自衛隊が広報活動の強化策として、ホワイトアローズを2018年10月に公式曲技飛行チームとしました。

 実は航空自衛隊のブルーインパルスも、もともとは操縦教官が技術向上を目的として発足されたのですが、ホワイトアローズも同じような歴史を辿っています。

 ホワイトアローズ誕生後、2019年には「レッドブル・エアレース」で展示飛行を行い知名度が急上昇!ブルーインパルスとは違うコンパクトかつ機敏な演技で見る方を魅了しております。

ホワイトアローズのすごいところ

 ブルーインパルスも十分すごいのですが、機体が異なるなどホワイトアローズにはブルーインパルスには無いすごいところがあります。

パイロットは教官と兼任

 ブルーインパルスは広報専門の部隊なのでアクロバット飛行などの広報活動が専門ですが、ホワイトアローズのパイロットは教官と兼任です。なので、普段はパイロットを育てるため学生の横に乗り操縦のイロハを教えたり、座学をやります。

 なので、皆さんの前でパフォーマンスするときはいわゆる休日出勤扱いになります。

T-5のアクロバット飛行は限界ギリギリ

 T-5はブルーインパルスが使うT-4と比較すると、エンジンスペックは1/4程度でエンジンパワーに全然余裕がありません!そこで、T-5でアクロバットをより軽快に魅せようとするには、演技の時にしっかり速度をつける工夫が必要です。

 課目によっては降下気味にスタートして加速させています。こうした工夫を自然に演目に取り入れながら軽快な演技を行っています。

おわりに

 ホワイトアローズで有名になったT-5についてお話しましたがいかがでしたでしょうか。普段は学生を教育する練習機として活躍していますが、アクロバットができるというところを活かして活躍の場が広がっています。

 海上自衛隊もホワイトアローズを活用した広報に力を入れていくそうなので、ブルーインパルスとの共演が実現したら嬉しいですね!!

小月航空基地で展示されるT-5練習機

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