【航空学生時代の思い出⑥】 大空へのデビュー!!

航空学生

前回のお話(航空学生時代の思い出⑤ レ、レンジャー!!)はこちらから!https://osintcatjoe.com/aviationcadet5/

こんにちわ!!ジョーです!!

本シリーズ、今回からいよいよ飛行機に乗り込んだ時のお話となります。

 今回は「ホワイトアローズ」で一躍有名となった「第201教育航空隊」でT-5に出会い、最初の関門となるソロフライトまでのお話をご紹介します。

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第201教育航空隊・T-5とは??

 小月教育航空隊で航空学生としての2年間の教育を終えると同基地内にある第201教育航空隊(以下201教空)へ異動となります。

 しかし、一度に受け入れられるキャパシティの都合上、一つのクラスを2つに分けて201教空への異動時期を数か月ずらして異動させます。

 この時先に201教空に入隊する方の学生を「前期」、後から入隊する方を「後期」と呼んでました。後期になった方の学生は引き続き小月教育航空隊で「飛行準備過程」という教育課程に入り受け入れ準備が整うまで3か月程度体力などを磨きながら待っています。※成績の優劣で異動のタイミングが決まるわけではないのでご心配なく!!

 私は前期の方へ選ばれたためすぐに201教空へ入りました。

第201教育航空隊で運用されるT-5型練習機。 Photo by Masanori.Goto

 第201教育航空隊とは、海上自衛隊のパイロットを養成する部隊の一つで、固定翼・回転翼操縦士及び戦術航空士(総じて幹部搭乗員)の候補となる自衛官に航空機の操縦・運航の基礎を座学や実技で教育します。

 そのため、海上自衛隊の幹部搭乗員は全員T-5の操縦経験があります。
 201教空ではT-5を用いて大きく次のような教育を受けました。

・基本操縦(上昇・降下・旋回等)
・離着陸
・緊急操作
・アクロバット
・計器飛行
・地文航法による飛行
・夜間飛行
・編隊飛行

 上記のいくつかを「ステージ」と呼ぶ分類をし、各ステージで定められている科目を行い段階的にレベルアップを図り、ステージの最後には検定が行われます。この検定を合格すると次のステージへステップアップすることとなります。

 このうちいくつかのステージではソロフライト(学生のみの単独飛行)が組み込まれており、検定の合否によってソロフライトの許可も出ます。それでは訓練の流れに進みましょう!

着陸への第一歩、ハイワーク

 最初のステージでは離着陸ができるようになるところまでが到達目標となります。

 これは、タッチアンドゴー(連続離着陸訓練)を行い、教官のアドバイスなしで離陸と着陸ができるようになることを指します。※天候に関してはVMC(有視界飛行状態)という晴れて安定している状態で行います。

タッチアンドゴーを行っているT-5練習機。 Photo by Masanori.Goto

 しかし、いきなりタッチアンドゴー(連続離着陸訓練)を行うわけではございません!

 離着陸は飛行機を飛ばすために不可欠ではありますが、「クリティカル・イレブン」と言われる通り最も危険が伴う場面でもあります。

 なぜ、離着陸の間が「クリティカル・イレブン」と呼ばれるからというと、離陸後の3分と着陸までの8分が速度が遅く、失速速度に近いため(飛行機は速度が遅すぎると揚力が足りず自由落下に陥ってしまい、これを失速と呼びます。)揚力が少なく非常に不安定な状況であるためです。

 そのため、「危険な状況に陥らないまたは危険な状況に陥っても冷静に対応する」ことを目的にまずはT-5という航空機を制御する術を上空で行う科目(ハイワーク)で体得します。

 ちなみに、T-5での訓練は安全確保などの観点から「有視界飛行方式(VFR)」で訓練を行います。  ※有視界飛行方式:有視界気象条件下でパイロットの判断で比較的自由に飛行できる方式

 ハイワークでは主に以下の科目を行います。

・基本飛行(上昇・降下・旋回・水平飛行)→平常時の飛行特性の把握
・低速飛行(スローフライト)→低速時(バックサイド領域内)での飛行特性の把握
・急旋回(スティープターン)
・失速(ストール)→失速からの回復法

 スローフライトはホワイトアローズも飛行展示の演目にも入っておりますので、「バックサイド領域」の話を交えて少し解説します。

 スローフライトとは文字通り低速飛行なのですが、実は失速領域ギリギリの速度で飛行してます。フライトシュミレーターをされている方には体験していただきたいのですが、この速度域で水平直線飛行をやろうとすると舵の効きが悪くすごくフラフラします。

水平直線飛行とスローフライトの比較

 インフィニットフライトというフライトシュミレーターでスローフライトを再現してみました。

 水平直線飛行とスローフライト時の形態とコックピットの写真を比較していただくとわかるのですが、低速でもスロットルの位置はほとんど変わらないまたは少し前進しているように見えるかと思います。 

 これがバックサイド領域に入っている状況です!!

 そもそもバックサイド領域とは、低速時にエンジンの出力を巡航時よりも大きく必要になっている状況で、実際にはフルパワーに近いところまで出力を上げる場合もあります。

 このようなスローフライトをはじめとしたハイワークでT-5の飛行特性の把握して、着陸時の操縦へ活かしていきます。

熱血のTGL(タッチアンドゴー)訓練!

 ハイワークの科目を一通り習得するととうとうTGL訓練へ移行します。

TGL訓練では飛行場のトラフィックパターンで時間いっぱいTGL訓練を行います。

小月航空基地上空 場周経路図

 TGL訓練ではまず、トラフィックパターンの各レグを経路通り飛べるよう訓練前半の数回では各レグごとに重点を置いて訓練します。(1回目の訓練ではアップウインド、2回目はクロスウインドをメイン)

 そして徐々に技術を洗練させていきます。

 ベースターンからファイナル、接地と地面に近くなっていくごとに細かな修正がより必要になっていきより精密なコントロールが求められていきます。

 そしてこの時T-5は、少しずつ減速しながら滑走路へ近づいていきますが、前述の通り失速域へ近づいてもいきますので危険度も少しずつ増えていきます。

 そのため、教官も数を重ねるごとに熱が上がっていきヒートアップしていきます(汗)昔はファイナルレグでヘルメット越しに頭をたたかれながら着陸したなんて話もあるくらいでした。

 実はこのステージで壁にぶつかりソロフライトまでできず学生罷免になるケースが比較的多いのです。やはり、着陸ができないと航空機の運航がそもそもできないのでこのステージは最初にして最もふるいにかけられるステージでもあります。

 そのため、教官も担当の学生を育て上げるべく必死になるので、訓練がないときや終わった後も地上でイメージトレーニングを様々な方法で行う学生をレクチャーしたり付き添ったりします。

 例えば、滑走路へのアライン(滑走路の中心線に機体を合わせること)が苦手な人は自転車こいでるときにわざと道路の白線をまたぎながら走ったり、グライドパス(降下角)を合わせることが苦手な人は滑走路の写真を見ながらぶつぶつしたり・・・など様々な方法で同期や教官と少しでもうまくなろうと努力してます。

 私の場合は結構不器用な部類でしたので、補習を受けたりしながらなんとか検定へこぎつけました。。

 検定を迎え普段とは違う「検定官」の資格を持つ教官と1対1でのフライト・・・非常にプレッシャーのかかる中でTGLを行うのですが、その時は特に何も言われず何度かTGLを行ったところで教官から「次フルストップ(着陸)して。」の一言、着陸を終えスポットインしエンジンカット。

 ビビりながらも「ありがとうございました!」と教官にあいさつしたところで、「細かいところはデブリーフィングで話すけど、検定合格!!、ソロフライト行ってこい!!」と言われて全身の力が抜けたのは今でも鮮明に覚えています。

 ともあれ何とかソロフライトにこぎつけました!

 ちなみに海上自衛隊でソロフライトをするときは完全に一人だけで乗り込んでフライトするのではなく、学生同士で乗り込みフライトすることを指します。これは、安全対策の一環でこのようにしています。

 そして、最初のソロフライトを終え最初のステージは終了!次のステップへ前進します。

終わりに

 今回は第201教育航空隊へ配属となりソロフライトを終えるまでについてお話しました。かなり省略してしまいましたが、学生と教官が一体となり努力してようやく着陸ができるようになります。私は高卒で自衛隊へ入隊したので、この時ちょうど20歳・・今にして思うと若いな~なんて思っております。

 次回はアクロバット飛行など、ステップアップした訓練飛行について紹介します。

 また、より細かなお話は月刊Jウイングでも紹介しておりますので参考にしてください!

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