【航空学生時代の思い出②】 激動!特別指導期間!
こんにちは!
じょーです!
自衛隊のパイロット育成コース、「航空学生」での経験談を紹介する『航空学生時代の思い出』第2弾、今回は特別指導期間についてご紹介します。
海上自衛隊航空学生、最初にして最もキツイ期間となります。
強い絆を作る秘密とは?!
特別指導期間とは?
「特別指導期間」とは、航空学生として入隊した者に対し、自衛官としての基礎的な素養(自衛官の義務などの服務に関する知識)や体力の錬成を主眼に鍛える期間を指し、海上自衛隊の航空学生独自で定められている教育期間です。
その厳しさは自衛隊の教育期間で1、2を争うほどで、これを乗り越えると体力面や精神面でかなり成長します。
自衛隊の中でもあまり聞きなれない言葉になりますが、陸・空もしくは海上自衛隊でも同様の訓練期間は存在し、海自航空学生以外の方では「教育期間」とか「指導期間」とお伝えすれば伝わりやすいかもしれません。
航空学生は入隊してから約2か月間、朝早くから夜遅くまで後ほど説明する「特別指導官」と言われる教官からのキツイ指導を受けることとなります。
朝起きてから教務(授業)開始までの流れは次の通りで、通常時と特別指導期間中ではその内容に大きな差があります。
正直、この期間中は朝からフル稼働なので教務が始まる時間が待ち遠しいものでした。ただし、教務が始まると朝の訓練の疲れが出てきてウトウトしやすいので注意が必要です。(あんまり寝ていると、特別指導官からお怒りの追加訓練が・・・)
教務が終わり、昼休みになると教官室のそばにあるホワイトボードにこのようなメッセージが大体あります。
「○○○○(時間)庁舎前 服装:体操服」・・・。昼の訓練の合図です。
このような流れで少しでもまとまった時間があると訓練が組み込まれ、体力をどんどんつけていきます。
特別指導官とは?
ここからは特別指導官について説明します。
「特別指導官」とは、航空学生を鍛え上げるために選抜された文字通り「特別」な指導官となります。私が教育を受けているときは正直鬼教官にしか見えませんでした。(汗)
江田島にある「幹部候補生学校」には、通称「赤鬼・青鬼」と呼ばれる鬼教官がいますが、特別指導官に比べれば天地の差がありました。
※当然、「慣れ」というアドバンテージがあるとは思います・・
だいたい入隊した航空学生の6つくらい先輩(階級は3等海尉で当然航空学生出身)が4~5名、全国に配置された基地から集められます。この人たちは同期でそれぞれが学生の小隊(15人程度で編成)を割り当てられ指導していきます。
ちなみに選抜された人たちはそのクラスで少なくとも10本指に入る優秀な人材で、特に将来有望な人となります。(ただし、それぞれの航空部隊の事情も踏まえつつ決定される)
特別指導官を経験した同期に指導したときの話を聞くと、夜は基本的に指導方針をめぐって、「○○の体力をどうやって伸ばすのか?」など意見が衝突することが多いとのことです。
2ヶ月という短期間の中でもいくつかのフェーズがあり、そこまでに預かっている学生を所定のレベルまで確実にもっていくため、日々苦心していたとのことでした。
1日の集大成 甲板掃除と巡検
朝昼夕と訓練を重ねながら夕飯とお風呂を済ませた後に知られざるイベント「甲板掃除」が近づいて参りました。
海上自衛隊は陸・空自衛隊に比べ特に掃除に関しては厳しいという意見も聞こえるほどで、成人前にして「掃除を極めたな・・・」と錯覚するくらいきれいにします。
まず、掃除が始まる10分ほど前に集合し甲板係(掃除の総括や各種物品の管理+風紀委員的な係)が各ポジションの担当に不足している物品がないか確認、掃除のトピックを伝えてミーティング完了。
時間になったら掛け声とともにみんなが全速力で掃除の担当区域へ向かいます。
航空学生の甲板掃除は、20分で与えられた区域を掃除・片付け完了までを行います。当然、終わる際服装を整えて待機します。
担当区域の広さはその年のクラスの人数にもよりますが、私のときは校舎の1フロアくらいの広さを4~5人で受け持っていました。人数に対して広いだけでなく、埃1つ残さないようきれいにしなければなりませんので、大胆かつ繊細に掃除しなければなりません。
どれほどきれいにするかというと・・・
鏡→一切のくもり・ほこりなし
トイレ→毛やほこりが一切なし、水滴が一切なし
窓→くもりやふちの汚れ、サッシやレールに至るまで砂埃も含む汚れなし
などなど・・・とにかく一切の汚れを許しません。
これをこの後におこなわれる「巡検」で全ての区画のチェック・指導が入ります。
上の写真の手前側(青い帽子の人たち)が点検官、特別指導期間中はここに特別指導官も加わります。
そして、さながら小姑のように点検官たちは様々な区画チェックを行います。
汚いところを見つけると「お~い!点検番!!」と大声で呼ぶので、「はいっ!!」と元気よく返事し、全力ダッシュで向かい指導を受けます。こういうやり取りがかれこれ1時間近く各所で行われようやく1日を終えるのです。
就寝後のエキストララウンド
航空学生の間、消灯時間は22時となっており就寝態勢が整っているかも特別指導官は確認します。
しかしストレスフルな毎日から少しでも抜け出すため、たまにちょっとした悪さを考える同期もいるのですが・・・見つかるといきなり全部屋の照明がつき居室の通路で出るよう怒鳴り声が響きます。
当然、連帯責任なのでみんなで腕立てやベッドメイキング訓練などを行います汗
そして、また翌朝総員起こしからフルパワーで励むのです。
ちなみに私はこの経験の中で初めて「夜中に足がつって起きる」という経験をしました!疲労もピークを迎えるとこうなってしまうのですね汗
その時の教訓からか年を重ねた今でも軽くストレッチをしてから寝るという習慣がつきました。
伝統?!の変わった訓練
自衛隊ではご存じの方もいらっしゃいますが、体力をつけるために様々な訓練が行われます。
航空学生では先輩から脈々と受け継がれる一風変わった体力錬成メニューがあります。
その名を・・・「スーパー4拍子飛び」!!
海上自衛隊ではラジオ体操のような感覚で「海上自衛隊第一体操」という体操を行います。
普段、体操を行うときは学生が1名前に立って号令をかけながら体操をしますが、この時だけ特別指導官がみんなの前に立ち大声で一言。
「総員、スーパー4拍子飛び用意!!」
普段、体操を行うときは学生が1名前に立って号令をかけながら体操をしますが、この時だけ特別指導官がみんなの前に立ち大声で一言。
「総員、スーパー4拍子飛び用意!!」
はい、全員キョトン顔です。
それでも特別指導官は真面目な顔をして・・・
「声が小さい!!スーパー4拍子飛び用意!!」
「1!2!3!4!・・・」と号令がなり訳も分からず号令についていくと・・・。
「あれ?4拍子飛びだけ?楽勝じゃない?」と心の中で思い始めて5分ほど続くと、今度は「全然終わらないじゃないか!?いつになったら終わるんだ!?」と思いつつ15分、20分と経過し息も絶え絶え、全身がパンパンになったころにようやく「止め!」と一言。
ようやく終わった・・と思うと特別指導官から「お前たちもようやく先輩たちと同じ道を通ったな!まだやり足りないだろう!では腕立て伏せ用意!」
結局、腕立てしてへとへとになりながら授業へ向かいました汗
ちなみにこの手の訓練メニューはいくつかありまして、「スーパー4拍子飛び」はその一つです。なので、特別指導官が一体どんな特別メニューを考えているのかは入ってからのお楽しみです!
おわりに
今回は航空学生の最も初めに行われる「特別指導期間」について紹介しました。自衛隊でも屈指の厳しさで有名な教育である特別指導期間は、それまで高校生だった子たちを幹部自衛官になることが前提で一気に「自衛官」に変貌させるので、体力や素養、人間性などあらゆる面で求めるレベルは高いです。
やはり幹部といえど、ひとたび任務となれば誰よりも過酷な環境で活動するので、その辛さというか過酷さというのは下士官(~曹や~士と呼ばれる階級)を従う立場になる以上、少しでも分かってあげられるようにすることと、ともに解決する方法を見出すメンタルを作り上げることが目的の一つです。
だからこそ、誰よりも厳しい教育を受けますがこの「特別指導期間」が終わるころ、人として非常にたくましく成長しますので暖かく見守ってくださいね!