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【飛行機図鑑】新時代の海洋監視アセット シーガーディアン

joe
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こんにちは!
じょーです!!

いつも飛行機や自衛隊について、自分の経験談を交えながらできるだけ分かりやすくその世界をご紹介しています。

今回は海上保安庁が導入した最新の無人機「シーガーディアン」についてご紹介します。
海上自衛隊も試験的運用を経て導入が決定。現在、活躍しているP-3CP-1に並んで警戒監視などの任務に就く見込みです。

そこで今回は個人的な意見も交えつつ、この航空機のすごいところなどを解説します。

シーガーディアンとは?

シーガーディアンは、MQ-9Aリーパーと呼ばれるジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ製の米空軍を中心に配備されている無人機の能力向上型です。

従来まで使用していたエンジンから推力向上型へ変更したことで、センサーや武器などの搭載量が増加。
従来より高精度のセンサーやオプション装備をより多く搭載できるようになり、より幅広い任務ができるようになりました。

主要任務は情報収集や軽攻撃で、地上にあるステーションから衛星通信などを利用し遠隔操縦して運用することが特徴です。

シーガーディアンのベースとなったMQ-9Aリーパー
シーガーディアンのベースとなったMQ-9Aリーパー。Photo by US Marine

スペック

シーガーディアンの主なスペックはこちらのとおりです。

全長11.7m
全幅24m
搭載エンジンHoneywell TPE331-10
(940SHP)×1
最高速度210㏏(約390km/h)
最高高度40,000ft(約12,000m)以上
航続距離5,000NM(9,260km)以上
最大滞空時間30時間以上
乗員2名(パイロット、センサー員各1名)
General Atomics Aeronautical社HPより引用

他の無人機と同じく、最高高度や滞空時間は、有人機に比べ非常に高性能となっています。

海洋監視のため発進するシーガーディアン
海洋監視のため発進するシーガーディアン。海上自衛隊第2航空群Twitterより出典

グライダーのような非常に細長い(アスペクト比が大きい)主翼が非常に特徴的で、非常に長い滞空時間の秘訣とも言えます。
また、胴体は通信用の衛星通信アンテナを上部、そのほかのセンサー類は胴体下面に集中して配置しています。

搭載センサー

シーガーディアンが機体に搭載している主なセンサーなどは下図のとおりです。

シーガーディアンのセンサーなど
シーガーディアンのセンサーなど

図のように機体のコントロールを司る衛星通信用のアンテナは、機体の上面に複数ありますが、捜索用のセンサーは機体の下面に搭載しています。
これは、捜索対象となる艦艇などを見下ろすように探すので、センサーの死角を作らないように考えられた配置です。

光学センサーで撮影した巡視船、甲板上の人もはっきり見える。
光学センサーで撮影した巡視船、甲板上の人もはっきり見える。

光学センサーなどは非常に高解像度となっており、海上保安庁などが公開した画像では、人も鮮明に写っているほどです。

オプションポッド

海上保安庁では導入されていませんが、オプションで対潜用のソノブイや偵察用センサー等のポッドが7種類あります。

ポッド形式のオプション装備なら、任務ごとに付け替えることで1機で様々な機能を与えられることができます。運用データを積み上げながら、今後このようなオプション装備も搭載するかもしれません。

海上保安庁での運用

海上保安庁ではその長時間滞空能力を活かし、これまで有人機で行ってきた海洋監視や捜索救難を連続的に行い、乗員の負担軽減などの効率化を狙っています。

初めての運用体系

海上保安庁はシーガーディアンのシステム一式を購入したのではなく、リース契約という形で導入しました。もうすこし分かりやすく言うと、買ったのではなくレンタルをしています。

そのせいなのか、海上保安庁から公表されている内容では、パイロットとセンサー員はジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズのスタッフで、オペレーションの指示や取得したデータの解析は海上保安庁が担当するという形をとりました。

シーガーディアンのコックピット、たくさんのモニターが並んでいる。

海上保安庁のオペレーターは別の基地にオペレーションルームを設置しており、取得したデータの解析やフライトに関する指示を出すなどの業務を行っています。

飛行中のMQ-9Aリーパーを操縦する海兵隊員。シーガーディアンも地上から遠隔操縦する。
飛行中のMQ-9Aリーパーを操縦する海兵隊員。シーガーディアンも地上から遠隔操縦する。Photo by US Marine

海上自衛隊も導入を決定

2024年11月に防衛省はシーガーディアンを海上自衛隊に導入することを発表。
時事通信では2025年度から10年かけて23機調達予定と報じられました。

防衛省は令和7年度予算案にシーガーディアン2機と地上のコントロール用の機器などを導入することを明記しました。
ここではそこまでの流れについて紹介します。

海上保安庁に続いて「試験運用」を開始

2023年2月27日に、シーガーディアンを開発したジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)より発表がありました。それは、2023年4月より海上自衛隊でシーガーディアンの試験運用を開始するというもので、5月に試験が開始されたと海上自衛隊より発表されています。

海上自衛隊八戸航空基地でタキシングするシーガーディアン。海上自衛隊Twitterより出典

これは、2022年12月に公表された防衛3文書の1つ、「防衛力整備計画」に記載されている無人機の導入に関係する動きと思われ、非常にスピード感のある展開です。

ちなみに、この防衛力整備計画にはおおむね10年後までに無人機部隊を2個隊編成する計画となっております。

GA-ASIにはシーガーディアンのオペレーターとして元海上自衛隊の哨戒機搭乗員が何人も入社しており、運用法の確立やオペレーターの育成はスムーズにできるものと考えられます。

海上保安庁は運用試験中、海上自衛隊八戸航空基地を拠点に運用を行っていたので、試験要員も海上保安庁やGA-ASIと連携し、運用方法などのノウハウを得ながら、海上自衛隊としてさらに必要な戦術の研究などが行われると想像しています。

一部の報道では、P-1などの哨戒機との協働運用(MUM-T)についても試験すると報じておりますが、同じネットワーク内で目標情報の共有を行うのか、哨戒機からコントロールして運用するのか詳細は不明です。

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シーガーディアンを買うための試験ではない?!

2023年6月に報道関係者へシーガーディアンが公開され、その際に海上自衛隊の関係者は「運用試験」ではなく「試験的運用」と呼んでいました。
この試験的運用の意味するところは、無人機を導入するために必要なデータ収集ということだそうです。※詳しい話は専門誌(航空ファンJWings)を読んでみてください。

そんなシーガーディアンの試験的運用ですが、2024年9月までをメドに約2000時間飛行して様々な試験を行いました。
2000時間と表現すると少し分かりにくいですが、週2回、毎回数時間のフライトを基準に少しずつ実戦的な試験を行っていきます。
ちなみに海上自衛隊が使用していた機体は、海上保安庁と共用でリース契約しているとのことです。

その後、海上自衛隊でシーガーディアンが導入されるのかは不明ですが、現状では海洋監視をメインで行える無人機が存在しないので、導入が決まった際はシーガーディアンになる可能性は高いと考えられます。

警戒監視のため離陸するシーガーディアン。海上自衛隊第2航空群Twitterより出典

2024年2月には、鹿児島県にある海上自衛隊鹿屋航空基地も試験的運用に使用されることとなりました。 
4月から9月までの間、八戸航空基地と鹿屋航空基地の間を合計6往復し、7月から9月までの間は東シナ海でも飛行するとのことでした。

これは、より実戦的な環境で警戒監視を想定した運用を行い、導入に向けてさらにデータ収集を行うことがその意図だと思われます。

おわりに

今回は海上保安庁で配備を始めたシーガーディアンについて簡単に解説しました。
シーガーディアンは海上自衛隊でも導入が決定し、配備先が発表されることを待つばかりです。

飛行場の運用時間やこれまでの実績から、八戸と鹿屋のいずれかまたはその両方になることが濃厚です。
しかし、海上自衛隊で最も重視している戦いは対潜戦であり、シーガーディアンはソノブイを搭載できるとはいえ、搭載量や速度性能はP-3やP-1と比較すると非常に劣ります

海上自衛隊のP-3C哨戒機
海上自衛隊のP-3C哨戒機。

そのため、緊急発進など瞬発力が必要な場面では不向きと言わざるを得ません。
また、有人機と比較するとやはり余剰パワーが不足しており、防除氷系統などに不安があるので、悪天候の中で飛ぶことも不安が残ります。

ただし、よく公表されている中国やロシアの艦艇への監視を連続的に行う場合は、滞空性能の高さを存分に発揮できると思います。
そのターゲットから取得したい情報に応じてシーガーディアンを活用すると、艦艇や航空部隊の人的な負担軽減をはじめとした効率化につながることが期待できます。

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    ブロガー
    元海上自衛隊パイロットで現在は会社員。 自衛官を辞めたら、想像以上に知らない人が多いことに気づいたので、自衛隊や飛行機に関する話を独自目線で書き始めた。
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