【兵器解説】中国新型空母「福建」を徹底解説!

こんにちは!
じょーです!!
いつも飛行機や自衛隊について、自分の経験談を交えながらできるだけ分かりやすくその世界をご紹介しています。
さて、去る6月17日に中国で3隻目となる空母が進水しました!
元海上自衛隊パイロットのじょーが独自の目線でこの新型空母について解説します。
中国3隻目の新型空母、その名は「福建」
今回進水した3隻目となる新型空母は「福建」と名付けられ、その艦番号は「18」とされました。

これまで、1番艦が「16:遼寧」、2番艦「17:山東」と続き、今回の名前になりました。いずれも中国の省の名前が由来となっております。
新華社通信によると、満載排水量は80,000トン以上とそれまでの2隻に比べ、1.2倍以上大きくなっている模様です。
最も有名なアメリカの「ニミッツ級」で満載排水量約100,000トン、フランスの「シャルル・ド・ゴール級」で約43,000トンと「福建」は、この2隻の間くらいの規模となる空母のようです。
そのため、運用できる航空機は単純計算で60機前後になることが予想されます。
外見上の特徴
ここからは1番艦「遼寧」と比較しどのように変わったか見てみましょう!

外見上特に変化の大きかった点は次の2点でした。
・アイランド部(艦橋やマストなどが一体になっているところ)の小型化とデザイン変更
・艦首部デザインの変更(発艦方式の変更)
こちらの2つに焦点を絞って解説します。
アイランド部の小型化とデザイン変更
世間では次に語る発艦方式に大きなフォーカスが当たっていましたが、ひねくれ者のジョーは少し違うところに注目しました。
そしてこのアイランド部分に今までの訓練などのフィードバックが詰まっているのでは?と思って見ておりました。

アイランド部を比較すると前後の長さが非常に短くなったこと(小型化された)と、艦橋部の構成が大きく変わっております。
左側の遼寧は(画像が不鮮明で分かりづらいですが)窓が1列に並んでいるものが前後に配置されておりますが、右側の福建は2階建てのように上下2段に窓が並んでおり、上段は少し右側にオフセットされています。
それぞれの空母で船の航行を司る艦橋と艦載機を管制する管制塔のような役割をする部分に分かれているのですがおそらくこれは艦橋とのコミュニケーションや艦載機を見渡せる配置を見直したものと考えています。
またマストに集約された固定式のアンテナ類はこれまでの空母2隻から更に発展している可能性が高く、これらも今までの設計ノウハウや国産レーダーの小型化等が考えられます。
またマスト部分はレンハイ級にも似た統合マストが採用されており、各種レーダーなどのアンテナが固定式で搭載されています。

艦首部のデザイン変更
艦首部は発艦方式の変更に伴い全面フラットの形状に変わりました。

比較画像の②の部分を見ていただくと、遼寧は艦首部に傾斜が設けられています。
これは「スキージャンプ」といい、艦載機が自力で滑走し発艦する形式になります。
メリットとしてカタパルトの設置がない分設備コストが低く抑えられます。しかし、発艦に関してその艦載機のエンジン性能に依存するため、燃料や武装をたくさん搭載して発艦ができないというデメリットもあります。
これに対して福建は「カタパルト」を搭載しています。カタパルトは艦載機の推力ではなく、カタパルトそのものの射出する力をその艦載機の重さに応じて変更させることができるため、スキージャンプ方式に比べて重い状態またはより大型の航空機でも発艦させることができます。
カタパルトを搭載している空母は主にアメリカの「ニミッツ級」、「ジェラルド・D・フォード級」、フランスの「シャルル・ド・ゴール級」になりますが、いずれもカタパルト自体はアメリカ製となりアメリカ以外でカタパルトを実用化する初めての国になります。

この点から中国の技術力向上がうかがえます。
また、上図ではカタパルトがあると思われる小屋が3棟あり、3基のカタパルトがあると思われます。
そのため、スキージャンプ方式ではできなかった2機同時発艦や固定翼早期警戒機の運用ができるなどより効率的な艦載機運用ができるかもしれません。
今後の展望
新型空母「福建」は、東海艦隊に配備されると言われています。
中国海軍の東海艦隊は、主な作戦海域が東シナ海・太平洋周辺となっております。つまり、中国の掲げる「第一・第二列島線」の防衛と対台湾の作戦が主な対応になります。

東海艦隊へこの空母の配備をする意図としては対米戦略を見据えてのものと考えております。これまで2隻の空母を建造・運用試験を繰り返し得たノウハウを落とし込んだ福建はまさに中国海軍の旗頭としてあえて目立つ形で試験など行うかもしれません。
福建の注目される装備として「電磁カタパルト」があげられます。
映画「トップガン」では艦載機が発艦するときモクモクと煙が出ていましたが、あれは蒸気がレールの間から漏れ出ており、現在のカタパルトは蒸気の力で射出するものが活躍しています。
電磁カタパルトはいわゆる「リニアレール」となり、蒸気カタパルトよりも機器を少なくできるということなのですが、アメリカ海軍でもフォード級の運用試験で苦戦していることから、トラブルや発艦出力の調整などクリアしていく課題は多いようです。
そのため、福建も今後数年にわたる長期で試験を行う可能性は高いため、実際に戦力化されるのは5年以上先と思われています。
気になるところが福建に搭載される艦載機です。
中国で活躍するJ-15戦闘機は、当初カタパルトには対応していなかったのですが、2024年の珠海エアショーでカタパルトに対応したJ-15Tというタイプが初登場し、すでに部隊へ先行配備されていると言われています。
この運用データをフィードバックさせて、福建に搭載される艦載機が改良されていくと想像するとますます気になる存在になりそうです。