※アイキャッチ画像は海上自衛隊HPより出典
こんにちは!ジョーです!!
最近、国防分野において物騒なお話がたくさん飛び交う中、改めて日本の防衛について注目されています。
今回は日本の防衛で最も重要な分野の1つ、「弾道ミサイル防衛」にフォーカスを当てお話ししようと思います。
最近防衛の話題になると必ず出てくる質問ですので、防衛白書を参考にしながら私なりにかみ砕いてお話します!
日本を取り巻く弾道ミサイルへの防衛事情
日本はご存じの通りロシア・中国・北朝鮮の3か国に囲まれています。
現在、これらの国々は国力の向上や国外への影響力の拡大などを理由に軍の活動が活発化しております。特に北朝鮮に関しては国際的に核兵器の保有が認められていないにも関わらず、核兵器や弾道ミサイルの開発を続け、既に日本を射程内に収める能力を持っていると言われています。(ロシアと中国は既に弾道ミサイルや核兵器を保有している。)
また、近年では北朝鮮の金正恩総書記が「核兵器の先制利用を辞さない」という姿勢を示しており、その対応が急務とされています。(中国やロシアは核兵器の先制利用について発言していない。)つまるところ、北朝鮮の都合次第で日本やアメリカへ向けて弾道ミサイルが撃ち込まれる可能性があることを示唆しています。
そのため、一般的に認知されている弾道ミサイル防衛は、最も可能性が高い北朝鮮の弾道ミサイルに対抗することが主たる想定となっております。そして、北朝鮮は弾道ミサイルの発射訓練を増やしており、弾道ミサイル防衛は日々重要度を増しています。
弾道ミサイルとは?
弾道ミサイルに対する防衛が重要とのお話をしましたがそもそも弾道ミサイルとは何者なのかお話します。
防衛省の資料では次のように定義されております。
「弾道ミサイルは、放物線を描いて飛翔するロケット推進のミサイルで、離れた目標を攻撃することが可能。核・生物・化学兵器などの大量破壊兵器の運搬手段としても使用される。」
もう少し砕いて説明すると、弾道ミサイルはミサイルの一種で、放物線を描くように飛ぶことで遠くまで飛ばすことに長けております。ただし、長射程化するためにはその分燃料を必要としますので、射程に比例して大柄になります。大柄なボディができることで弾頭部にはスペースに余裕ができるため、大量の火薬や大量破壊兵器を搭載することが可能です。
弾道ミサイルの種類
弾道ミサイルは主に射程の長さと発射母体から種別を分けられております。
射程から見た弾道ミサイルの種類
弾道ミサイルは射程の長さから以下の4つに分類されます。
・短距離弾道ミサイル(Short Range Ballistic Missile:SRBM) :射程1,000km未満 ・準中距離弾道ミサイル(Medium Range Ballistic Missile:MRBM) :射程1,000km以上~3,000km未満 ・中距離弾道ミサイル(Intermediate Range Ballistic Missile:IRBM): 射程3,000km以上~5,500km未満 ・大陸間弾道ミサイル(Inter-Continantal Ballistic Missile:ICBM): 射程5,500km以上
1,000kmというと東京から鹿児島県の佐多岬までの距離と同じになります。また、平壌から東京までの距離は約1,300kmですので、MRBM以上の弾道ミサイルであれば、北朝鮮国内から本州を全て射程に収めることができます。
発射母体から見た弾道ミサイルの種類
射程のほかに発射母体によって以下の分類があります。
・潜水艦発射弾道ミサイル(Submarine Launched Ballistic Missle:SLBM)
・空中発射弾道ミサイル(Air Launched Ballistic Missle:ALBM)
これらは発射方法別に分けているため、射程の定義はありません。
弾道ミサイルはなぜ脅威なのか?
弾道ミサイルが防衛上の脅威である理由は私の考えでは以下の通りとなります。
・威力が大きい
・射程が非常に長い
・迎撃が困難
以上の3つです。これらについて解説します。
威力が大きい
先ほども少し触れましたが、弾頭ミサイルには通常弾頭(いわゆる爆弾)のほか、大量破壊兵器(核・生物・化学兵器)の搭載も可能です。
広島に投下された原子爆弾「リトルボーイ」の威力が15kt(キロトン)と言われております。現在アメリカで配備されている「B-61シリーズ」の威力は、最大で360㏏とリトルボーイの24倍の威力があります。
上図はB61が東京に着弾した場合のシミュレーションです。これを見ると、東京駅に着弾すると都内の主要な地域全域で甚大な被害がを受けることが分かります。
射程が非常に長い
前項でもお話しておりますが、弾頭ミサイルというのは非常に長射程のミサイルでそのミサイルによっては自国の領域から遥かに離れた地域まで狙うことができます。
北朝鮮が保有するミサイルで最も射程が長いと言われる「火星15号」では射程が10,000km以上と、東京から映画祭で有名なフランスのカンヌまでの距離と同じだけの距離が射程になると言われております。
迎撃が困難
弾道ミサイルが再突入する際、非常に高速で落下してきます。その落下速度は最大でマッハ24(約28,600km/h)ともいわれております。あまりの速さにスケールが追い付かないですが、1時間で日本から南米のコロンビアまで往復できるほどのスピードです。
ちなみに北朝鮮から発射した弾道ミサイルは5分程度で東京に着弾します。このスピードについていき識別ができるだけ処理能力の高いセンサーとシームレスに対応できる迎撃手段が必要となります。
弾道ミサイル防衛
弾道ミサイルが非常に脅威となる兵器であることを前項まで説明させていただきましたが、ここから本題の弾道ミサイル防衛について説明します。
弾道ミサイルの飛翔フェーズについて
弾道ミサイルは発射してから着弾するまで3つのフェーズに分けられます。
・ブーストフェーズ
・ミッドコースフェーズ
・ターミナルフェーズ
ブーストフェーズ
発射後、ロケットエンジンを燃焼し加速しながら宇宙空間へ上昇する段階。比較的低速だが陸上発射型の場合、発射した国の領土内に発射機などが所在しているので、発射前に無力化するには巡航ミサイルなどが必要となる。
ミッドコースフェーズ
ロケットエンジンの燃焼が終わり、宇宙空間を慣性飛行によって飛行している状態。
ターミナルフェーズ
大気圏から再突入し目標へ向かい落下している状態で重力によって加速され、極超音速で着弾する。
各フェーズで最も重要な「情報収集」
いくら大柄なミサイルだと言ってもいつ発射されるのかは黙っていても分かりません。そのため、アメリカ・日本・韓国では、弾道ミサイルに関する動きについて情報共有ができるよう整備されています。
また、発射の兆候はアメリカの早期警戒衛星やコブラボールのような情報収集機、発射時の追跡はレーダーサイトやイージス艦、早期警戒機と呼ばれる航空機がミサイルが発射される前から睨みを利かせています。
【航空機解説】ミサイル専用情報収集機 RC-135S コブラボール
飛翔フェーズ別の迎撃方法
ブーストフェーズ
以前はアメリカがAL-1と呼ばれるボーイング747をベースにした空中発射レーザーが開発されていましたが、計画は中止されており、現在ブーストフェーズで迎撃するシステムはありません。
ただし、探知・識別・追跡のためアメリカでは早期警戒衛星が常時警戒監視しております。
ミッドコースフェーズ
ミッドコースフェーズでは日本のミサイル防衛システムではイージス艦が活躍します。イージス艦に搭載しているSM-3というミサイルが宇宙空間で迎撃します。
イージスシステムとSM-3
「イージスシステム」はもともと空母を中心とする艦隊全体を防空するために開発された火器管制システムを指します。これは広範囲・多数の航空目標を同時に探知・識別・脅威判定・迎撃まで行われる非常に優れたシステムです。しかしながら弾道ミサイルを迎撃する能力はありません。
弾道ミサイル迎撃に利用される海上自衛隊の護衛艦はこのイージスシステムに弾道ミサイルへ対応するため「イージスBMD」と言われる機能を追加し弾道ミサイルへの対処能力を付与しました。このイージスBMDはイージスシステムのもつ能力を弾道ミサイルへ集中させることで探知・識別・追尾を行うものとなります。
ただし、イージスBMDにも弱点があると言われており、この機能を使用しているときは弾道ミサイルに対して一点集中でリソースをまわすこととになるため艦隊のエリア防空ができないまたは自身の個艦防空ができないという点です。
このイージスBMDに構成されるミサイルがSM-3です。このミサイルの特徴は「運動エネルギー弾」であることと「姿勢制御をロケットモーター等で行う」ことの2つです。
運動エネルギー弾とは簡単に言うと、一定の質量を持った物体が直接目標へ当たり破壊する機能をもつ弾丸兵器を指します。
姿勢制御をロケットモーター等で行うのは大気圏外で目標へ追尾する際、翼で姿勢制御ができないためです。
ターミナルフェーズ
ターミナルフェーズでは、PAC-3対空ミサイルが活躍します。PAC-3は「ペトリオット」と言われる防空システムの発展型で、対航空機・対巡航ミサイルが主な目標だったシステムを弾道ミサイルにも対応できるよう発展させたものです。
この時に実際に発射されるミサイルが大幅に変更され、それまでのペトリオットで使用されたミサイルよりも小型・軽量となりました。ランチャーを乗せているトレーラーには4発までミサイルを搭載していましたが、PAC-3では16発まで搭載できるようになりました。
おわりに
弾道ミサイル防衛について複数の迎撃手段があることをここまで解説しました。ここまでご覧いただいた方は「ここまで弾道ミサイル防衛の能力が整備されているなら大丈夫ではないだろうか。」と思った方も中にはいるかと思います。
ところが、実は足りていないのです。
まず、弾道ミサイルはブーストフェーズからターミナルフェーズへ進むにあたり加速し続けています。また、高威力の核弾頭を備えていることがあるため確実に迎撃しなければ目標とされた地域は一撃で破壊・消滅を招いてしまいます。
そのため、最も確実に弾道ミサイルを破壊するにはより「早い段階で破壊する」ことが必要です。
対北朝鮮を例にとると日米で連携し常時弾道ミサイルの警戒監視を実施しております。また事前に兆候を察知すると情報共有を行い警戒監視の段階を上げて「弾頭ミサイル等に対する破壊措置命令」の下令などを行うなどの法的整備が行われております。しかし、これらはミサイルが発射されてからアクションを開始するのでより早い段階で迎撃するということが間に合わない可能性もあります。
最初の方でも述べましたが、弾道ミサイルは最終的に最大でマッハ24という想像もつかないほど高速で落下し着弾します。
これを迎撃するのは非常に難しく、例えるなら「F1マシンくらいの速度でスイングされる刀を真剣白刃取りするようなもの」です。さて、皆さんそれができますか?
普通ならできないのでもっと確実な手段を考えると思います。それがトマホークなどの巡航ミサイルを用いたピンポイント攻撃で、いわゆる「反撃能力の行使」です。
トマホークに関しては以下の記事で紹介していますので、ご覧のうえ日本の防衛に必要なのか考えてみてください。
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